研究課題/領域番号 |
17K20049
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高田 達之 立命館大学, 薬学部, 教授 (90206756)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 内分泌かく乱 / レチノイン酸 / 幹細胞分化 / 琵琶湖固有種 / ホンモロコ |
研究実績の概要 |
化学物質のレチノイン酸(RA)シグナルへの影響に関して、ヒトiPS細胞においてもマウスES細胞と同様の結果が得られるかを検討した。その結果、ヒトiPS細胞の分化時においても化学物質がRA応答遺伝子の発現を変化させることをリアルタイムPCRにより確認した。これまでマウスES細胞において生殖細胞特異的遺伝子が化学物質の影響を受けることをリアルタイムPCRにより見出していたが、その影響を俯瞰するためマイクロアレイによるトランスクリプトーム解析を行った。具体的には、化学物質添加時において特異的に発現変動する遺伝子群と、公開データベースに存在するin vivo生殖細胞分化時の発現変動とを比較し、クラスタリングを行った。このとき各条件の遺伝子発現特性を Gene ontology (GO) により特徴付けるGene Set Enrichment 解析を用いた。その結果、生殖細胞分化、減数分裂に関連するGOがクラスターを形成したことから、化学物質はこれらに関連する機能に影響していることが示唆された。 また精原細胞の凍結保存を開発し、独自の琵琶湖固有魚ホンモロコの in vitro 精子分化系、および精子分化過程のフローサイトメトリー解析を用いて化学物質が精子形成に与える影響を解析した。その結果、ノニルフェノールの存在下で精子形成が影響を受け、特に精子数が減少することが明らかとなった。ビスフェノールAやノニルフェノールは、琵琶湖に流入する河川で検出されており、生体濃縮を考慮すると検出される濃度範囲で固有種の精子形成に影響している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトiPS細胞を用いた分化実験においても化学物質の影響を確認した。マウスES細胞でのトランスクリプトーム解析が順調に進んでおり、また独自に開発したin vitro精子分化系を用いて実際に化学物質が琵琶湖固有種の精子形成に影響することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
マウスES細胞でのトランスクリプトーム解析を進めるとともにヒトiPS細胞分化時のレチノイン酸シグナルに与える影響、そのシグナル伝達経路を明らかにする。 さらにゼブラフィッシュ胚を用い、個体レベルにおいて化学物質がレチノイン酸シグナル、器官形成、個体発生に与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスES細胞でのマイクロアレイ実験、ヒトiPS細胞での実験系の構築、および琵琶湖固有種の精子分化解析が比較的順調に進んだため。今後、iPS細胞のゲノム編集、ゼブラフィッシュ胚でのin situ ハイブリダイゼーションに使用する予定である。
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