研究課題/領域番号 |
17K20049
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高田 達之 立命館大学, 薬学部, 教授 (90206756)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2023-03-31
|
キーワード | レチノイン酸シグナル / 化学物質 / トランスクリプトーム / ヒトiPS細胞 / 頭蓋軟骨形成 / 神経形成 |
研究実績の概要 |
化学物質がもたらす遺伝子発現変化の結果として頭蓋軟骨形成が影響を受けることを定量的に明らかにするため、アルシャンブルー染色により、特定軟骨の長さ、軟骨間の角度の測定を行った。その結果、化学物質の濃度依存的にこれらが影響を受けることが明らかとなった。また、これらの測定が困難となる頭蓋軟骨形成異常の頻度も化学物質の濃度依存的に増加することも示された。神経形成に関しても化学物質の濃度依存的に形成異常が起こることが神経繊維の免疫染色により明らかとなった。これらの結果から、トランスクリプトーム解析から得られた発現変動遺伝子の影響は、その発現量のみならず、発現領域にも影響し、その結果として頭蓋軟骨形成、神経形成に影響することが定量的に示された。 さらに発現領域の変化が頭部形成に重要なレチノイン酸のグラジエント形成期に受ける影響を調べるため、受精後10時間、13時間のゼブラフィッシュ胚においてホールマウントin situ hybridizationによる発現解析を行った。その結果、この時期にも発現領域の変動が見られることが明らかとなった。 すなわち化学物質の影響は発生初期の形態形成に関与する遺伝子発現に影響し、その結果、頭蓋軟骨、神経系性に影響していることが定量的に示された。ゼブラフィッシュ胚のトランスクリプトーム解析においてもヒトiPS細胞と共通した発現変動遺伝子群が抽出され、その共通性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子発現解析をその発現量と発現領域の両面から解析し、化学物質の濃度依存的に影響を受け、最終的に頭蓋軟骨形成、神経系性に影響することが明らかにできた。特にヒトiPS細胞とゼブラフィッシュを用いて、細胞レベルと、個体形成レベルで共通した変動が起こるという結果が明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
ゼブラフィッシュ胚のトランスクリプトーム解析をさらに進めるとともに、ヒトiPS細胞のトランスクリプトーム解析結果と比較し、その共通性を明らかにする。またゼブラフィッシュ胚においてもリアルタイムPCRによる定量解析を行い、発現領域の変化と比較、統合して化学物質の影響を論じる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
半導体不足により、購入予定機器が生産されず、その納入が間に合わなかったため。 2022年度、当該機器の購入を行う。
|