研究課題
最終年度は、ヒトiPSCにおいて複数の化学物質が同時に存在した場合にレチノイン酸シグナルに与える影響を明らかにするため、単独添加の場合と比較した。また、化学物質と類似構造を有する生体ホルモンの影響も調べた。その際のレチノイン酸シグナル伝達経路を詳細に解析するため、レチノイン酸受容体(RAR)サブタイプ特異的アンタゴニストを用いて解析した。ゼブラフィッシュにおいても他の化学物質、およびRARインバースアゴニストのレチノイン酸シグナルへの影響をin situ hybridization,神経形成、頭蓋軟骨形成により解析した。本研究により、ヒトiPSCにおいて化学物質がレチノイン酸シグナルに影響することがリアリタイムPCR、マイクロアレイによる発現解析により明らかとなった。また一部の遺伝子に関してはタンパク質レベルでもその変動が確認された。レチノイン酸シグナルは動物の発生、形態形成において重要な働きを有する。そこでヒトiPSCを用いたin vitro実験で得られた結果が実際に生体でも起こりうるかを明らかにするため、ゼブラフィッシュ胚を用いて同様な実験を行ない、in situ hybridization,神経系性、頭蓋軟骨形成により解析した。その結果、化学物質はゼブラフィッシュにおいてもレチノイン酸シグナル応答遺伝子群の発現領域に変化をもたらし、神経、頭蓋軟骨形成に異常をもたらすことが明らかとなった。この結果は、ゼブラフィッシュ胚のトランスクリプトーム解析によっても支持された。本研究は、化学物質がレチノイン酸シグナルを撹乱して生体に影響を与えるという新たな実験的根拠を示すとともに、ヒトiPSCを用いた実験系が脊椎動物発生時における化学物質影響を推測する良いモデルとなりうることを明らかにした。
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