研究課題/領域番号 |
17K20141
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小川 康雄 東京工業大学, 理学院, 教授 (10334525)
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研究分担者 |
青山 裕 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30333595)
山本 希 東北大学, 理学研究科, 准教授 (30400229)
筒井 智樹 秋田大学, 国際資源学研究科, 准教授 (70240819)
寺田 暁彦 東京工業大学, 理学院, 講師 (00374215)
大倉 敬宏 京都大学, 理学研究科, 教授 (40233077)
神田 径 東京工業大学, 理学院, 准教授 (00301755)
小山 崇夫 東京大学, 地震研究所, 助教 (00359192)
石崎 泰男 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (20272891)
吉本 充宏 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (20334287)
野上 健治 東京工業大学, 理学院, 教授 (70251676)
森 俊哉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40272463)
木川田 喜一 上智大学, 理工学部, 教授 (30286760)
片岡 香子 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (00378548)
上石 勲 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 総括主任研究員 (60455251)
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研究期間 (年度) |
2018-02-08 – 2019-03-31
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キーワード | 火山 / 自然災害 / 水蒸気噴火 / 草津白根火山 / 本白根火山 |
研究実績の概要 |
2018 年 1 月 23 日 に本白根山鏡池北火口で 1500 年ぶりの水蒸気噴火が発生した。顕著な前駆的な活動がない水蒸気噴火プロセスの解明、今後の火山活動の推移の予測、融雪泥流発生リスクの評価のために総合観測を実施した。①地震観測では、3地点の臨時観測点を追加し統合処理することで,本白根火砕丘周辺の地震活動の把握が可能になった.噴火から3か月前までのデータを再解析し,震源の時空間変化・低周波地震の発生状況等の精査を行った.②地盤変動に関し、2011年からの既存のGNSSデータを再調査している。また、今後のマグマ噴火への移行の可能性を探るために、これまで湯釜周辺に集中していたGNSS連続観測網を本白根も含めた周辺に拡大し増強を進めている。③熱観測では、本白根山を中心とする広域の空中磁気測量や熱赤外撮影を、産業用の無人ヘリコプターを用いて稠密に行い、火山体内部の基盤構造や熱異常分布などを検出することを計画している。④噴出物調査については、降灰分布を調査し、噴出量を推定した。噴石の被害状況把握のため、ゴンドラ山麓駅に格納されているゴンドラ搬器の目視および写真測量を実施した。また、噴石の全岩分析、火山灰の薄片観察と変質鉱物の同定を行った。⑤噴火に伴う熱水環境の変化の検出のために本白根山周辺源泉及び白根山湯釜火口の湖水の繰り返し観測を実施した。本白根山麓の殺生河原から放出される噴気ガス組成について,繰り返し観測を実施した。また,UV分光計による遠隔測定により新火口からのSO2放出の監視を実施した。⑥融雪泥流評価のため、噴出物の物性分析を行い,河川モニタリング機器を設置し、積雪水量分布調査を行った.空中写真と現地調査から噴石起因の雪崩や発生状況を図化し,噴石による融雪や雪崩発生の可能性を検討した.複数パターンの泥流流下シミュレーションを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①地震観測については、本白根山周辺の震源決定が可能となった.初期解析として,噴火前後2週間について手動検測による震源決定が完了した。また相関処理による噴火前後の地震検出を進めた。噴火後に設置した臨時点については,当初の断続的なデータ伝送障害を改善させ,リアルタイム処理のための体制が構築された.②地盤変動については、既存データの再解析を進めている。草津白根山周辺のやや広域の国土地理院の電子基準点データも入手し、統合解析をすすめている。観測網の増強では、本白根山の南側に3箇所、北側の志賀高原で1箇所を選定し、許認可申請を進め、1箇所については既に観測を始めている。③熱観測については、3月に無人ヘリコプターによる調査を行ったが、調査途中でヘリコプターが墜落したため、やむなく調査を中断した。墜落時までの測定データも未回収であるため、本白根山上空の飛行データが得られていない。④噴出物調査は、入域規制区域外の調査はほぼ終了した。降灰分布、噴出量、噴出物の記載岩石学的性質・全岩化学組成、噴石被害状況に関するデータが着実に取得できた。⑤地球化学調査では、噴火直後から二酸化硫黄の放出の遠隔監視が継続できている。積雪期で山頂へのアクセスが困難で試料採取の回数は限られている。⑥融雪泥流評価については、予定通り,複数回の現地調査や室内での分析・写真判読を実施し、融雪期に発生する可能性の高いいくつかのパターンについて泥流流下シミュレーションを行い、リスク評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
①地震観測にいては、本白根火砕丘周辺における噴火前後の地震活動の時空間変化を示し,地殻変動や地下構造と併せて火山活動を理解する.現状の臨時地震観測点を整備し,さらに新たな臨時点設置を検討する。現状の3点の臨時地震観測点のうち,1点(干俣北)については環境ノイズがやや大きく,雪解け後に代替地に移設する。②地盤変動観測については、計画通りに進める。③熱観測については、6月頃に再調査を予定しており、予算をその費用にあてる。④噴出物調査については、入域規制が緩和される4月下旬以降に、火口近傍域での火砕サージ・噴石の分布調査、ゴンドラ山頂駅に格納されている搬器の被害調査、山頂駅自体の被害調査を実施する。⑤地球化学観測については、引き続き二酸化硫黄放出の遠隔監視を実施し,山麓域でのガス組成及び温泉水組成の繰り返し観測を実施する。雪解け後に山頂域の火山ガス観測・温泉水の繰り返し観測を実施する。⑥融雪泥流評価については、融雪期の終わりまでは,融雪と降雨の相互作用による泥流のリスクがあるため,河川のモニタリングや積雪調査を継続的に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
①臨時地震観測点では、今後の観測の継続のために,ノイズが少なくアクセスの良い場所に移設することが望ましいと判断されたが、積雪で作業が困難であったため出張旅費を繰り越す必要が生じた.噴火直後は臨時観測点に北大・秋田大・東北大から一時的に地震計を借用し、それらを新たな地震計に置き換える予定であったが、地震計の納入が年度末に間に合わなかったため,その購入費用を繰り越した。融雪後,速やかに現地調査を行い,装置を購入する。③熱観測については、墜落した機体の回収を冬季閉鎖が明ける4月20日以降早急に行い、データの回収を試みる。また、中断した調査を6月頃に再度行い、当初の計画をすすめる。④噴出物については、入域規制により、H29年度に予定していた火口周辺域の噴出物調査が実施できず、計上していた経費に残額が生じた。H30年度には火口周辺域での噴出物調査も実施する予定であり、繰り越し金はこの調査と試料分析の経費に用いる。④地球化学観測については、年度末で、必要な部材や装置など十分に整えられず繰越金が生じた。繰越金は自動観測システムの整備及び観測機材購入のために使用する。⑤融雪泥流評価については、現地調査期間が積雪期の年度末であったため,一部の調査が天候上困難であり,繰越金が生じた。次年度も融雪期があり、依然として泥流発生のリスクが存在するため,現地調査や河川モニタリングを継続的に行う。
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