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2018 年度 実施状況報告書

ロシア教会における君主主義の系譜:在外ロシア教会からツァレボージュニキまで

研究課題

研究課題/領域番号 17KK0019
研究機関北海道大学

研究代表者

高橋 沙奈美  北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 助教 (50724465)

研究期間 (年度) 2018 – 2020
キーワードロシア / ニコライ二世 / 正教会 / 聖人崇敬 / 宗教社会学
研究実績の概要

当初の計画では、2019年4月より国外での研究をスタートさせる予定であったが、研究代表者が九州大学へ赴任することが決まったため、計画を半年後に延期することにした。今年度は渡航に向けての準備を中心に進めた。
まず、ニューヨークの在外ロシア正教会シノドのアーカイヴで収集した資料の読み込みを行った。そこから、在外ロシア正教会の主教たちが、どのように最後の皇帝ニコライ二世とその家族を崇敬の対象として位置づけていったのか、その過程を明らかにした。これについては、ロシア史研究会の大会で報告を行い、また、現在この報告をもとにした論文を日本語で執筆中である。
研究計画では、亡命社会におけるツァーリ崇敬が現代ロシアに及ぼしている影響についても考察することを予定していた。これに関連して、第三期プーチン政権のイデオロギーと呼ばれる「ユーラシア主義」に着目した。すでに、日本でもチャールズ・クローヴァー(越智道雄訳)『ユーラシアニズムーーロシア新ナショナリズムの台頭』(NHK出版、2016年)が紹介されている。この著作はジャーナリズムの視点で書かれたものである。一方文学者の乗松亨平らはロシア思想史の中にA.ドゥーギンの「ユーラシアニズム」を位置づける試みを行っている。本研究課題では、正教会のかかわりから、この問題にアプローチするべく、準備を進めている。
また、共同研究者のひとりであるN.ミトローヒン氏とは、2019年2月にウクライナで研究打ち合わせを行い、今後の研究予定を確認した。もう一人のI.パプコヴァ氏ともメールで連絡を取り合い、北米における調査予定について、調整を依頼している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では、2019年4月からの渡航予定であったが、研究代表者の所属先の変更に伴い、在外研究を半年延期している。しかし、在外研究のための資料収集を国内においても継続し、それによって研究課題の更なる深化の可能性を開くことができた。また、共同研究者とも定期的に連絡を取り合い、渡航後の研究計画を支障なく展開できるよう、準備を進めている。
ただし、ハーヴァード大学デーヴィスセンターでは受け入れに当たって、研究計画書を提出する必要があるが、現在執筆中である。計画書が提出されないと、受け入れ機関を変更する必要が出てくるため、急ぎ完成させ提出することが不可欠である。

今後の研究の推進方策

ジョン・ストリックランドは、近年の研究において、正教会の聖職者がツァーリを聖なるものと捉え、それを愛国主義と結びつける考え方はそれほど古いものではなく、帝政末期に展開されたものであることを実証的に証明している(John Strickland, The Making of Holy Russia: The Orthodox Church and Russian Nationalism before the Revolution (Jordanville, 2013))。ストリックランドによれば、正教者によって促進されるナショナリズムである「正教愛国主義」は、1913年のロマノフ王朝300年式典とほぼ同時に行われた、17世紀初頭の総主教ゲルモゲンの列聖でピークを迎えた。ゲルモゲンは、ポーランドがモスクワを占領した際に抵抗したことで知られた総主教であり、1989年にスヴェルドロフスクの市民たちが殺害されたニコライ二世の記憶のために集まった際には、ツァーリと共に、ゲルモゲンをイコン風に描いた手製の教会旗が用いられている。
こうしたことを踏まえて、帝政末期の正教愛国主義の継承という要素も考慮に入れながら、亡命社会におけるツァーリ崇敬に関連するロシア選民思想や反西欧的政治体制の思想的系譜をたどることが必要である。具体的には、ヨーロッパやアメリカのアーカイヴに保存された亡命聖職者のバイオグラフィーを参照にしながら、愛国主義の継承について検討を加えたい。

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公開日: 2019-12-27  

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