研究課題/領域番号 |
17KK0022
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉田 泰幸 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 客員准教授 (20585294)
|
研究期間 (年度) |
2018 – 2020
|
キーワード | 復元 / イメージ / 先史時代 / 考古学 / 表象 / 社会運動 / 博物館学 / 欧州考古学 |
研究実績の概要 |
本国際共同研究は、基課題研究「先史時代人はどのようにビジュアライズされるのか: 日本列島を例として」に欧州考古学史、日本の近現代思想史、メディア史との接点を見出し、それによって広がる論点をもとに、1)基課題研究を日本の考古学・博物館学の「内省的転回」を加速させる研究として昇華させる、2)国際日本学の中に考古学と近現代思想史の関係を考究する分野の確立することを目指している。そのために、A) 欧州・日本考古学についての共同研究、B) 日本の視覚メディアについての共同研究、C)日本の近現代思想史・社会運動史についての共同研究を進めている。 2019年度はA・Cを英国セインズベリー日本藝術研究所に滞在しながら進めた。前年度、「先史時代イメージ」を基課題研究で主に扱っている視覚イメージにとどまらず、表象活動一般(文芸、NPOによる活動、芸術祭など)とすることで、それらの分析の重要性を確認し、本研究の方法論的基盤の見直しを行った。それを受けて2019年度は、日本における先史時代の表象活動の同時代的な記録でもある<縄文にハマる人々>の分析をもとにした講演を国際研究集会にておこなった(2件)。また、先史時代イメージを含む考古学的想像力のあり方と行く末についての理論的基盤形成寄与を目指した発表を国際学会にておこなった(1件)。以上の成果は、物質文化研究専門誌に掲載されたフランスの先史学・人類学博物館評論の翻訳と解題(各1件)にも生かされている。 前年度にAの分析結果の一部を発表したが、当該文献が考古学専門誌に再録された(1件)。先史時代イメージのあり方に関する新聞記事に協力をおこなった(1件)ほか、国内外の先史時代遺跡活用の現場において、本研究の成果をどのように取り込んでいくか、そのみとおしについての発表も国内研究集会でおこなっている(1件)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は順調に進展している。 A) 欧州・日本考古学双方に通じる海外共同研究者との共同研究の結果、先史時代イメージの変遷について欧州考古学と日本考古学の比較検討を行うことができたのは、基課題研究との相乗効果の一例であり、その成果が考古学専門誌に再録されるに至った。両地域における先史時代イメージについて、追加のフィールド調査の必要性が明らかになり、次年度以降の調査計画が具体的となったが、2019年度においては本格化せず、前年度に課題としたB) 日本の視覚メディア研究に通じる海外共同研究者との共同研究の本格的始動が遅れている。 C)日本の近現代思想史・社会運動をグローバルな視点で分析している海外共同研究者との共同研究では、前年度に近年「縄文ブーム」といわれる現象などを思想史や社会運動史の視点から分析することを課題にあげた他、本研究の理論的基盤として「イメージ」の概念を拡張し、イメージに関する社会学、人類学の成果に配視し、接点を探ることも課題としてあげたが、それらは順調に進めることができ、複数の国際研究集会での発表に至っており、ある程度進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
A) 欧州・日本考古学双方に通じる海外共同研究者との共同研究では、英国・セインズベリー日本藝術研究所を拠点としながら英国、欧州大陸諸国での追加のフィールド調査を行う予定であるが、Covid-19禍による多大な影響が予想されるため、補助事業期間の延長申請も視野に入れて柔軟に対応する。 B) 日本の視覚メディア研究に通じる海外共同研究者との共同研究を本格的に開始する。 C) 日本の近現代思想史・社会運動をグローバルな視点で分析している海外共同研究者との共同研究では、これまでにおこなった国際学会発表の論文化を進める。 その他、イメージに関する社会学、人類学との接点を探り、理論的基盤の整備を行う。 これらによって、共同研究者との国際共同研究集会・学会セッションの開催、共編著論文集の刊行につなげていく。
|