本研究課題は薬物依存の形成に関わる心理学的機構を動物実験から明らかにすることを目的とした。学習理論の方法論にもとづいて実施した複数の実験から、薬物探索・摂取行動を制御する道具的行動過程および古典的条件づけ過程について重要な知見が得られた。乱用薬物への曝露によって合理的な意思決定がマウスにおいて阻害されること、また行動を最終的に依存へと導く想定される負の強化について、その導出をもたらす学習要因とその際の特異的な行動を検出した。さらに依存の特徴である「行動の消し難さ」に関して、行動が消去された後に再発する際の連合構造を明らかにした。総じて、依存の機序解明に向けて着実な成果が得られた。
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