ワクチン脂質ナノ粒子(LNP)にも用いられているポリエチレングリコール(PEG)は生体親和性高分子として知られ、タンパク質製剤へのPEG化はタンパク質製剤の免疫原性を低減させ、タンパク質製剤の治療効率向上に貢献している。一方、PEG化タンパク質において、抗PEG抗体が産生することが知られ、実際、PEG-uricase製剤において、IgMやIgG抗体を含む抗PEG抗体の存在によって治療効果が低下することが報告されている。本研究において、申請者はPEGの抗原性と免疫原性との関係について検討を行うなかで、抗PEG抗体の産生を低減することのできる新たなPEG化手法を見出した。合成法の確立は本研究者の提案とUtrecht大学との議論に基づき、実施した。免疫原性の高いウリカーゼの末端アミノ基に対する活性エステル付加によるPEG化と同じく、ウリカーゼの末端アミノ基に対して新たなリンカーとなるPEG分子を用いたPEG化を行った。各種、紫外可視吸収スペクトル、GPC、1H NMRによりウリカーゼへ導入されたPEGを確認し、GPC測定による吸着特性に基づく安定性評価を行った。新たなPEG化手法は既存の手法と同等の安定性が得られた。また、帰国後、別途渡航した際に現地にて議論を行った。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、渡航予定(アーヘン工科大学2020年1月~)が困難になり、Web会談に基づき、各PEG化手法のウリカーゼの免疫原性を本研究者所属機関にて実施した。その結果、新たなPEG化手法はPEGの免疫原性を低減できることが確認された。各種リンカー鎖長を検討したところ、リンカー基の鎖長によってその効果が変わること、ウリカーゼの末端アミノ基への修飾部位の化学組成によっても免疫原性に影響することが明らかとなった。本手法は、従来のPEG化手法に代わる新たなPEG化手法として期待できる手法である。
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