研究課題
HVJ-Eによるメラノーマ治験患者のサンプルを阪大皮膚科から入手し、RNA seq.を行った。HVJ-E非投与のメラノーマ組織、HVJ-E(30000 mNAU)投与後1ヶ月経過して残ったメラノーマ組織、さらに治験終了後5ヶ月時点で新たに出現したメラノーマ組織である。T cellのマーカーであるSELLやLEF1がHVJ-E投与腫瘍組織や再発腫瘍組織で発現が高かった。HVJ-E投与後1ヶ月の腫瘍組織では、PDCD1, LAG3, TIGIT, CTLA4などのT cell exhaustion markerの発現が高く、再発部位ではそのような遺伝子の発現は見られなかった。T cell cytotoxic markerの発現は何れの組織でも低かったが、HVJ-E投与部位ではNKG7やGZMAの発現が認められた。制御性T細胞のFOXP3やPD-1のリガンドであるPDL1の発現はなかった。そのほかの免疫細胞(NK細胞、B細胞、マクロファージ)の遺伝子発現は3つの腫瘍組織で変わらなかった。TCRについては、マウスメラノーマ細胞のF10の担癌マウスで解析しているが、腫瘍内にはほとんどT細胞がいなかったので、マウス脾臓からCD3/CD8とCD3/CD4をsortingしてRNA seqを行っているところである。HVJ-Eをヒト前立腺癌細胞PC3にかけると、クロマチンの状態が変化することがATAC seq.により明らかになり、凝縮状態が緩和された。その部位にはp300がリクルートされることがChIP seq.により明らかになった。このような変化は正常前立腺上皮細胞株では起こらなかった。その結果、腫瘍特異的に発現する遺伝子候補を同定することができた。それぞれについてCRISPR/Cas9法でノックアウトした変異癌細胞を作成して、これをマウスに移植してHVJ-E感受性を調べるとIRF7のノックアウトによりHVJ-E感受性が失われた。そこでIRF7ノックアウトメラノーマ細胞を移植したマウスでもTCRを調べるためRNA seq.を施行している。
2: おおむね順調に進展している
患者の腫瘍組織の遺伝子情報の解析が行えた。TCRについては、その評価系を構築するところで時間がかかっているが、ようやく整えられた。一方、マウスの腫瘍におけるHVJ-Eの抗腫瘍活性を担う因子を解明できた。医療情報の解析については、患者が入り次第解析できる情況にある。
HVJ-Eによる抗腫瘍効果が見られているマウスと見られないマウスでの脾臓のT細胞を比較する予定である。このデータからHVJによる抗腫瘍効果とT細胞全体の遺伝子発現とTCRの関連の解析を行う。HVJ-Eの治験症例の血液サンプルを用いたTCRの多様性の解析を施行する。腫瘍マーカーをもとにしたHVJ-E治療群の分類を行い、それぞれの症例のTCRの多様性のパターンから、HVJ-E反応性と相関するTCRのレパートリーを統計学的に解析する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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