研究課題
基盤研究(B)
腸内細菌は難消化性多糖類の発酵代謝により短鎖脂肪酸を産生する。短鎖脂肪酸は多様な生理活性を有し、特に酪酸は腸管免疫恒常性維持における鍵因子とみなされている。本研究では我が国で年々増加している潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)患者における酪酸低下の原因を解析した。CD患者では主要な酪酸産生菌の顕著な減少がクローン病における酪酸産生低下の原因と考えられた。一方で、UC患者では腸内細菌によるムチン糖鎖利用の低下が酪酸産生低下の原因と考えられた。
免疫学
腸内細菌のバランス失調はディバイオーシスと呼ばれる。近年確立された分子生物学的手法を用いた腸内細菌叢の解析によって、各種疾患におけるディスバーシスの特徴が報告している。興味深いことに、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝硬変、メタボリックシンドロームなど何らかの炎症反応を伴う疾患で共通して見られる異常の一つは、酪酸産生に関わる菌種の減少である。本研究において、潰瘍性大腸炎に特有な酪酸産生低下の原因が明らかとなったことから、今後は本疾患の病態メカニズムの理解が進むと期待される。