本研究は、米州開発銀行(Inter-American Development Bank)、アフリカ開発銀行(African Development Bank)、アジア開発銀行(Asian Development Bank)、欧州復興開発銀行(European Bank for Reconstruction and Development)の4大地域開発銀行を対象として、域内における武力紛争への取り組みを比較考察しようとするものである。 2018年度には、海外出張によって米州開発銀行、欧州復興開発銀行、アジア開発銀行の事例について現地調査を行うことができた。米州開発銀行においては、近年のベネズエラからコロンビアなど隣国への難民の流出に伴う、人の移動に関する緊急人道事態への対応が焦眉の課題となっている。また欧州復興開発銀行においても、シリア難民が流入するトルコなどへの支援が課題となっていることがわかった。またアジア開発銀行では、主として太平洋島嶼諸国を中心とした脆弱状況を抱えた諸国、アフガニスタンへの平和構築への対応が課題となっていることが聞き取り調査などによって明らかになった。 総じて地域開発銀行の中では、アジア開発銀行が最も早くから体系的に域内における紛争や脆弱地域の問題に対応してきたこと、その他の地域開発銀行がアジア開発銀行の例にならってプログラムを導入していることなどが明らかになった。
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