研究課題
本研究では、ヒトiPS細胞を用いて、シングルセルRNAシークエンスを実施し、そのSNP情報からアリル毎の遺伝子発現をシングルセルレベルで観察することを目的としている。今年度は前年度に行ったシングルセルRNAシークエンスのデータ解析、及びその結果の論文投稿を行った。まず、ヒトiPS細胞と繊維芽細胞に対して、シングルセルレベルでのアリル特異的発現を1000以上の遺伝子に対して実施した。そして、これらの細胞間で異なったアリル特異的発現を検出し、その共通性または相違性を検証した。細胞集団を対称としたバルクのRNAシークエンスでは、多くの遺伝子が両アリルからの発現(バイアリル発現)を示していた。シングルセルRNAシークエンスでは、解析可能な遺伝子の多くはモノアリル発現を示し、発現されているアリルは個々の細胞によって異なっていた。各遺伝子の使用アリル情報について、各細胞の平均を取ったところ、バイアリル発現となった。これらの結果は、これまでバイアリル発現であると考えられてきた多くの遺伝子は、一細胞レベルでは片側のアリルから発現していることを示唆している。一部の細胞では解析した多くの細胞で同じアリルから発現される安定型モノアリル発現、または多くの細胞で両アリルから発現する安定型両アリル発現を示す遺伝子が観察された。これらの遺伝子の使用するアリルの傾向は繊維芽細胞とiPS細胞で大きな違いは見られず、また既報にあるインプリンティング遺伝子が必ずしも安定型モノアリル発現を示しているわけではないことが示された。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度は、ヒトiPS細胞及びそのオリジンである繊維芽細胞にについて、全ゲノムDNAシークエンスおよびシングルセル遺伝子発現解析を行うことで、シングルセルレベルでのアリル特異的発現を1000以上の遺伝子に対して実施した。その結果、解析可能な遺伝子の多くはモノアリル発現を示し、発現されているアリルは個々の細胞によって異なっていた。各遺伝子の使用アリル情報について、各細胞の平均を取ったところ、バイアリル発現となった。これらの結果は、これまでバイアリル発現であると考えられてきた多くの遺伝子は、一細胞レベルでは片側のアリルから発現していることを示唆していた。今年度はその結果を論文にまとめて投稿したことから当初の予定以上に進捗していると判断した。
次年度は、これまでに実施したアリル特異的遺伝子発現のバイオインフォマティクス解析のパイプラインの改良を行うと共に、DNAメチル化との関係を調べることで、アリル特異的発現の分子メカニズムに迫る。
今年度はデータ解析を中心に行ったため、その解析を担当する研究員の人件費を中心に予算を執行した。次年度は、今年度実施できなかったシングルセル遺伝子発現解析を計画しているため、繰り越すこととした。
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