研究課題/領域番号 |
18013016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
入村 達郎 東京大学, 大学院薬学研究科, 教授 (80092146)
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研究分担者 |
奥村 明彦 愛知医科大学, 医学部, 講師 (70288512)
中森 正二 国立病院機構大阪医療センター臨床研究部, 近畿がんセンター, 室長 (70294080)
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キーワード | 大腸癌 / 胃癌 / 肝転移 / レクチン / ASGPR |
研究概要 |
消化器癌は肝臓に転移することが多くこのメカニズムには肝臓のみに発現する分子が介在すると考えられる。本研究では肝臓アシアロ糖タンパク質レセプター1(ASGPR1)と癌細胞表面に発現するカウンターレセプターの相互作用に焦点を絞り以下4点を明らかにした。 (1)ヒト大腸癌細胞株23種の表面へのリコンビナントASGPR1の結合性をフローサイトメトリーにより比較すると6種で高結合、15種で中程度の結合、2種が非結合であった。固相化リコンビナントASGPR1への接着性は、結合性と相関した。しかし、固相化ASGPR1上での増殖の亢進は結合性及び接着性とは相関しなかった。従って、ASGPR1アンタゴニストによる肝転移抑制が適応となる症例を選別してテイラーメイド治療を行うためには癌細胞へのASGPRの結合性を調べるのみでは不十分であることがわかった。しかし、これらの結果は大腸癌細胞の多くはその増殖が、ASGPR1との結合を低下させることによって阻害できる可能性を示しており、治療の分子標的としての可能性が示された。 (2)これらの細胞株のうち、ASGPR1非依存的に増殖できるものは細胞周期制御分子の発現に特徴があるかどうかp16^<INK4a>及びcyclin D1に注目して比較したが、共通の特徴はなかった。 (3)胃癌細胞株においては、ASGPR1の結合性において不均一なものがあった。そこで、表面へのASGPR結合性によって細胞を分別したところ、高結合性細胞ではヌードマウスに於ける実験的な肝転移性が高かった。これらのバリアント細胞株に於いては、固相化したASGPR上に於ける増殖性に変化は見られなかった。従って、転移性の違いは胃癌細胞の肝臓への接着と滞留を促すためであると推測された。 (4)ヒト大腸癌組織及び胃癌組織に於いて、リコンビナントASGPR1の結合性が組織学的に検出された。
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