研究概要 |
【緒言】アルツハイマー病(AD)ではアミロイド(Aβ)蛋白が凝集・蓄積する。今回、牡丹皮およびその有効成分1,2,3,4,6-Penta-O-galloyl-β-D-glucopyranose(PGG)がAβ蛋白の凝集抑制作用および凝集した蛋白の脱重合作用を有することを見出した。 【方法】牡丹皮を水、メタノールおよびエタノールで抽出し実験に用いた。Aβ_<1-40>蛋白およびAβ_<1-42>蛋白の凝集抑制作用ならびに凝集蛋白脱重合作用は、Thioflavin-T法によって検討した。In vivoにおいては、APPトランスジェニックマウス(Tg2576)に牡丹皮およびPGGを経口投与し、脳切片を作成した後、Thioflavin-Sで染色して検討した。 【結果】牡丹皮はAβ_<1-40>蛋白に対し10μg/mlで50%、Aβ_<1-42>蛋白に対し100μg/mlで40%まで凝集を抑制し、用量依存性が観られた。また、牡丹皮は凝集したAβ_<1-40>蛋白、Aβ_<1-42>蛋白ともに100μg/mlで20%まで脱重合し、この結果は原子間力顕微鏡でも確認された。さらに、牡丹皮をトランスジェニックマウス(Tg)に経口投与しても脳で用量依存的なAβ蛋白凝集老人斑の減少が認められた。 牡丹皮からHPLC分析により同定された有効成分中、PGGに顕著なAβ_<1-42>蛋白の凝集抑制作用、凝集蛋白の脱重合作用を認めた。また、Tg2576にPGGを経口投与すると有意なAβ蛋白凝集斑の減少が認められた。さらに、脳内不溶性Aβ蛋白量および血漿中Aβ蛋白量の顕著な低下も確認した。 【結論】牡丹皮及びその成分PGGは経口投与でAβ蛋白の凝集を制御することから、今後ADの治療や予防のための新たな漢方処方や機能性食品に応用しうる。また、PGGはAβ蛋白を指標としたアルツハイマー病の創薬研究において重要なリード化合物になりえる。
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