研究概要 |
生体内で不要になったタンパク質は、ユビキチン化された後、プロテアソームにより選択的に分解される。そして、2003年にアメリカで、プロテアソーム阻害物質であるVelcadeが難治性多発性骨髄腫の治療薬として認可されており、さらに、2006年、アメリカで、海洋微生物由来のsalinosporamide Aの臨床試験が開始されている。私たちは,新規抗がん剤の開発のために、ユビキチン依存的タンパク質分解系を標的にして、この系に対する阻害物質を天然資源から探索している。そして既に、(1)プロテアソームに対する阻害物質として種々のagosterol誘導体及びsecomycalolide A、(2)ユビキチン活性化酵素(別名E1酵素)に対する阻害物質としてhimeic acid A、(3)がん抑制タンパク質p53とそのユビキチンリガーゼ(別名E3酵素)であるHdm2との相互作用を阻害する物質として(-)-hexylitaconic acid、及び、(4)p53がポリユビキチン化された後にプロテアソームへと運搬されるステップに対する阻害物質としてgirollineを、海綿や海洋真菌から発見・単離した。また、生薬のチモからもプロテアソーム阻害物質の単離に成功している。これら化合物の中で、Hdm2拮抗剤はp53の安定化を誘導し、その結果としてがん細胞の増殖を防ぐ効果が期待できるので、副作用の少ない新しいタイプの抗がん剤として有望であると考えられる。さらに、2006年度には、p53の作用を増強する別のターゲットとして、Ubc13-Uev1A複合体形成を阻害する化合物の探索を開始した。スクリーニングにより、海洋細菌の培養液に複合体形成阻害活性が認められたので、細菌の大量培養を行い、化合物の精製を行っている。
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