研究分担者 |
帰山 雅秀 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (80305937)
桜井 泰憲 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (30196133)
松田 裕之 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 教授 (70190478)
綿貫 豊 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (40192819)
宮下 和士 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (70301877)
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研究概要 |
世界自然遺産に登録された知床半島とその周辺海域における海産哺乳類,海鳥類を含む海洋生態系の多様性の保全と,水産資源よび漁業の順応的管理方策の確立を目的とする。海洋生態系の保全を前提とする重要な漁業対象種の持続的資源管理のための海域管理計画を立てるために,知床世界自然遺産海域の海洋環境と海洋生物のモニタリング手法の開発とフィールド調査を実施する。さらに,知床生態系における攪乱ダイナミズムと海洋-陸域生態系の相互作用を明らかにし,順応的管理をベースとした資源管理技術による生態系管理方法を検討する。最終的には,生態系ベースによる環境評価と持続的水産資源管理技術の確立を目指す。 本年度の成果は次のようにまとめられる。 1.衛星データを2005年1月から2007年10月まで解析し、次のことを明らかにした。春(夏)のブルームが起こる時期は、半島北側で4-6月、南側で5-8月である。秋のブルームが起こる時期は半島の北側、南側共に9-11月である。海面水温が約10℃まで上昇すると春/夏のブルームが起こる。夏に20℃まで上昇した海面水温が約10℃まで低下すると秋のブルームが起こる。 2.2007年6月および2008年1月に、根室海峡の羅臼沖にて,ROVによる海洋生物調査を実施、海底岩礁域の多様な底生生物群集などの知床周辺海域の特有な海洋環境と生態系の対応を観察できた。 3.音響カーテンシステムを、2007年7月31日〜8月5日に、知床半島周辺海域で計26台の音響受信機(VR2,Vemco社)を設置し、9月7日までカラフトマスの回遊行調査を実施した。 4.知床半島ルシャ川におけるサケ族魚類の河川遡上動態および陸域生態系への物質輸送について調査した。カラフトマスあるいはシロザケのδ^<15>Nが陸域生態系の生物にどの程度濃縮されるか,陸生昆虫やヒグマなどを通して河畔林へどの程度輸送されるかを検討した。 5.知床世界遺産の海域管理について、多様な魚種を利用することの有効性、多魚種管理におけるMSY理論の問題点を整理した。また、海洋保護区の有効性について数学的に検討した。さらに、知床世界遺産を例にしたガバナンスの重要性を議論した。
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