研究概要 |
幾何学的対象のモデュライ空間を記述する方法として, その対象を微分幾何的対象に置き換えて研究することはしばしば取られるアプローチである. リーマン面のモデュライ空間を定曲率計量や調和写像のモデュライ空間に置き換えて研究するのは, その典型的例である. もしこのようなアプローチが成功するならば, 問題としている幾何学的対象のモデュライ空間はハウスドルフ性やいいコンパクト化をもつなどのいい性質をもつことが予想される. 一方, マンフォードの幾何学的不変式論は群軌道に関し半安定なものの全体はハウスドルフ性やいいコンパクト化をもつなどのいい性質を持つということを主張している.そこで「微分幾何学的対象で記述できるモデュライ空間は幾何学的不変式論の意味の安定・半安定なもの全体と一致する」という仮設をたてることにする. 本研究の主目的は端的ケーラー計量, 特にケーラー・アインシュタイン計量, 定スカラー曲率ケーラー計量を持つ複素多様体を幾何学的不変式論の意味の安定性でもって特徴づけることによりこの仮説を実証することである. 幾何学的不変式論の議論に乗るような安定性の定義を与え, 多様体がその意味での安定性を持つことがケーラー・アインシュタイン計量などの良い計量をもつための必要十分条件であることを示すことである.
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