研究概要 |
平成21年度の研究計画に従い、本年度は膀胱癌、前立腺癌の研究を行った。これまでの蓄積された実験結果に加え、臨床応用を最終目標として遂行した。 1)膀胱癌研究 我々は尿路上皮癌細胞株培養上清のショットガンプロテオミクスにより、膀胱癌細胞の浸潤に関与する蛋白としてケモカインCXCL1を見出した。さらにこの分子が膀胱癌の尿中診断マーカーとして有用であるかどうかを、実際の膀胱癌患者尿67検体とコントロール尿33検体を用いてELISA法で検討した。CXCL1はすでに膀胱癌尿中マーカーとして確立しているNMP22,BTAと比較して感度・特異度の両者において優れていた。現在膀胱癌診断キットとして実用化可能性を検討している。 2)前立腺癌研究 前立腺癌ホルモン不応性獲得機序の研究において、新規樹立したアンドロゲン依存性前立腺癌XenograftであるKUCaPを用いたDNAマイクロアレイ解析により、ホルモン療法抵抗性獲得に際し変動する遺伝子の抽出を行なった。それらの遺伝子のうち、EP4遺伝子に注目し、同遺伝子が前立腺癌のホルモン抵抗性獲得に寄与し、ホルモン抵抗性前立腺癌の新たな治療標的分子となる可能性を示した(Cancer Research 2010)。さらに特許取得を行い、共同出願先である小野薬品工業との共同研究の形を取り、その特異的拮抗剤であるONO-AE3-208の臨床応用に向けて、動物実験による安全性と効果の検討を行った。
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