研究概要 |
本研究は,研究代表者らが開発を進めている走査型アトムプローブ(Scanning Atom Probe, SAP)の特性を生かして、有機分子が酸化チタンによりどのように解離するかを調べる事を目的としている。 この目的を達成するために、平成19年度には,位置感知型イオン検出器を既存装置であるSAPの中に組み込み動作を確認した。次の課題は酸化チタンの光励起触媒効果を調べるための照射光の選択であるが、パルスレーザー光と紫外から可視光を同時に照射出来る方式を確立し、実験を開始した。使用するレーザーは、パルス幅がピコ秒で、基本波(近赤外光)、2倍波(可視光)、3倍波(紫外光)を任意の偏光方位で試料面を照射出来る機能を持つが、本器は本研究代表者が分担者として参加している学術創成研究費により購入されたものを用いた。連続紫外光光源は平成19年に購入したキセノン光源を用い、この光を石英ファイバーでチャンバー内に導入するようにした。 もう一つの光照射方法として、レーザー光学系の改造により、複数波長を同時に試料に照射できるようにした。平成18年度までの状態では、パルスレーザーから取り出した基本波、2倍波、3倍波のうち、いずれか一波長の光しかトリガー光として用いることができなかった。そこで光学系の配置を改造し、光学素子を増設することによって、波長切り替えの際のロスタイムを減らし、かつ複数波長を組み合わせてトリガー光として使えるように改良した。 試料としては、酸化チタンの光励起触媒効果による有機分子の分解過程を調べるための基礎データとして、金属ティップを担体としたアミノ酸のアトムプローブ分析を開始した。この結果をもとに、平成20年度は光励起触媒効果によるアミノ酸分子の分解過程を調べる予定である。研究発表に関しては、低分子系の分析においてイナートな担体として用いられる、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイトナノファイバー(GNF)についての成果をまとめたものを論文として発表した。
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