研究概要 |
本課題は、近世から平成の現代までにおける著者への報酬、原稿料、印税の変遷を捉え、原稿料及び印税と文筆家の関係を分析し、近世の作者における原稿料の位置づけを行うとともに、近代以降の原稿料の様相と印税制度の定着、作家の経済的自立などについて明らかにしようとするものである。 平成20年度は、(1)文献調査とその蒐集、(2)研究会の開催、(3)データベースの作成、(4)報告書の作成、の4項目に分けて研究を推進する計画をたてた。 (1) では、国会図書館などに調査に赴き、高村光太郎、岩野泡鳴、、吉川英治、野村胡堂などの近代文学諸作家、明治・大正の文芸雑誌から報酬関係の資料を蒐集し、必要な文献は複写した。 (2) は、海外の出版事情の教示を仰ぐ講師との日程が合わないこと、取り敢えず蓄積されたデータを分析することで手一杯の状況になったので、今後の課題とすることにした。 (3) は、分担者が近世関係では若竹集などから、近代関係では、岩野泡鳴、高村光太郎、永井荷風などの日記・書簡と、伊藤整『日本文壇史』(昭和まで)などから、版権、印税・原稿料、発行部数などに関わる記事を採集した。前年度分も含めて、採集した記事に関してアルバイトを使って、(1)和暦、(2)西洋暦、(3)キーワード、(4)事項、(5)出典、(6)原文という共通の形式で原稿化し、エクセルファイルにした。以上、データ項目は約2,500項目以上あり、データベース化した。 (4) プロジェクトに関わった全員(連携研究者を含む)が論文を執筆し、また近世から2000年までのデータで1,200項目に精選して、原稿料の年表を作成し、報告書に掲載した。
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