研究3年目にあたる本年度は、(1)中国東北部・吉林省ならびに北京市および河北省興隆県地における現地学術調査および歴史資料調査、(2)中国・河北大学で行われた国際シンポジウムにおける国際学術交流、(3)韓国・済州島(チェジュド)における戦争記憶・植民地記憶に関する現地学術調査を実施することができた。 中国東北部地域における現地調査は2008年9月に実施され、博物館・史跡整備等を通して戦争・植民地記憶の保存・公開を図るいくつかの典型例を調査した。具体的には吉林省長春市にある「偽満皇宮博物館」「東北倫陥史博物館」など「満洲国」関連の博物館、河北省興隆県地域における抗日戦争遺跡、北京市にある中国人民抗日戦争記念館などである。 また歴史資料(文献)調査では、吉林省襠案館(公文書館)において関東軍関連資料の調査および収集を行った。同時に、吉林省社会科学院および河北省興隆県史編纂室、河北大学における現地研究者との学術研究交流を行った。 韓国・済州島における現地学術調査は2009年3月に実施した。植民地期において重要な戦略拠点として位置づけられた関係上、同島には「アルトゥル飛行場跡地」など旧日本軍関係の戦争遺跡が多数存在するが、それら戦争遺跡の保存・公開状況について詳細な現地調査を実施した。そして「済州抗日記念館」などの植民地記憶を表象する博物館、また解放後に発生した「4・3事件」についても、「国立4・3記念館」「4・3平和公園」の現地調査を通して、その記憶の記録化と表象の特色的な在り方について検討・解明することができた。
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