研究概要 |
会計・監査社会の変容および市場との相互作用の実態を明らかにすべく研究した成果として「会計社会の変容と市場の論理に関する総合的研究」報告書(397頁)を作成した。報告書の内容は以下の通りである。(序章)会計・監査社会の変容のインプリケーション,(第1章)機関投資家,資本市場の実態と会計情報-インタビュー調査を踏まえて,(第2章)利益の質と非効率な市場,(第3章)利益の質と会計発生高,(第4章)新興市場における市場環境の変化と企業情報-継続企業の前提に係る開示,(第5章)新興市場上場企業の財務報告に対する姿勢,(第6章)新興市場上場企業のIR分析,(第7章)経営者の業績予想と市場の評価,(第8章)IPO市場の価格形成と財務報告の信頼性,(第9章)組織文化から捉えたわが国監査法人の特質,(第10章)公会計における改革の萌芽-会計社会の拡大 研究の結果,(1)機関投資家・アナリストの実情,ファンダメンタル分析と資本市場の特質(市場を非効率にさせる要因はなにか等),ファンダメンタル・アナリストはどのような財務情報を有用とみるか等がインタビュー調査により明らかになった。(2)「利益の質」の概念を整理し,会計発生高や利益マネジメントと利益の質との関係が理解できた。(3)かならずしも効率的とはいえない新興市場を対象に,開示情報の意義,企業の財務報告に対する態度,IR活動の特徴がアンケート調査等で検討された。(4)経営者の業績予想情報のもつ市場への影響,IPO市場の価格形成に対する監査の貢献が実証分析により明らかになった。(5)わが国の監査法人には,それぞれの固有な組織文化があることがアンケート調査により発見された。(6)全地方公共団体へのアンケート調査で公会計制度改革の現状が明らかになった。
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