研究課題/領域番号 |
18330166
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松下 佳代 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (30222300)
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研究分担者 |
高木 光太郎 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (30272488)
庄井 良信 北海道教育大学, 教育学研究科, 教授 (00206260)
杉原 真晃 山形大学, 高等教育研究企画センター, 講師 (30379028)
平山 朋子 藍野大学, 医療保健学部, 准教授 (80388701)
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キーワード | 学び / コミュニティ / 移動 / 自己形成 / 固有名性 / 二重の応答性 / 境界領域 / ギャップ |
研究概要 |
平成20年度は、これまでの個別のフィールドワークとその協働的分析・理論形成の成果を発表し、交流することに力を注いだ。具体的には、The 2nd International Society for Cultural and Activity Research Congress (ISCAR 2008)において、「コミュニティ・移動・自己形成」というテーマのシンポジウムを企画し、全員が発表を行った。このシンポジウムの意図は、多様な実践共同体の間の移動を通して生起する学びと自己形成の問題を、単に社会性(成員性)だけでなく固有名性にも焦点をあてながら明らかにすることにあった。松下・平山は、学校から仕事への移動過程にある理学療法教育での臨床実習をフィールドとして、そこにおける学びの特徴として「二重の応答性(dual responsibility)」という概念を提案した。庄井は、不登校経験をもち特別支援学校に通う高校生が自己物語を再構成していくプロセスを、生徒の描画と教師との対話をデータに描き出した。高木・庄井は以上の2つのフィールド研究を意味づけるフレームワークを提示した。このフレームワークは、コミュニティ間を移動する際に生じるインタラクションの失敗を「ギャップ(gap)」と名づけ、それがコミュニティの要求する役割をこえた固有名の自己形成をもたらす可能性を論じた点に特徴がある。最後に、指定討論者であるフィンランド・オウル大学のPenti Hakkarainen教授から、今後深めていくべき課題(developmental transferと移動の関係、二重の応答性が生じる条件など)について示唆を得た。 以上の成果は、"Community, transition and self-construction"と題する冊子(全53頁)にまとめて、2009年3月に公刊した。
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