研究概要 |
これまでに申請者は非加法的Tsallisエントロピーを用いて重力多体系の平衡状態の解析を行った.具体的には,エントロピーの変分の極値から平衡状態を求め,圧力,密度に対する状態方程式がポリトロープ関係に従うポリトロープ状態が存在することを示した.そこで本研究では,Tsallisエントロピーの極値で与えられるポリトロープ状態が重力多体系を代表とする長距離相互作用系の準定常状態である,という理解を確立し,そのポリトロープ状態を軸に長距離相互作用系の非平衡現象を取り扱う理論的枠組みを構築する,ということを目的とした.具体的には (1)ポリトロープ状態による記述が,他の長距離相互作用系でも有効であることを示すため.2次元HMFモデルで数値シミュレーションを実行した.2次元HMFモデルでは,1次元HMFモデルと異なり2体衝突による緩和が存在する.この2体の緩和時間スケールで熱平衡状態に緩和してゆく準定常状態が存在することを確認した.またこの系は全エネルギーの値によって系の比熱が正の場合と負の場合が存在する.本研究では,数値シミュレーションにより,比熱が負の場合に限り,上の準定常状態がポリトロープ状態で記述できることを示した. (2)2次元HMFモデルでのポリトロープ指数の時間発展を理解するためには重力多体系のFokker-Planck方程式のような,運動論的方程式が必要である.この運動論的方程式の導出を行った.
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