研究概要 |
野尻湖湖底堆積物および高野層のTOC分析値を標準化して繋ぎ合わせ,過去16万年間の気候変動を連続的に解析し,その結果をEGUの第3回ヴァン・フンボルト国際会議(北京)で発表した.その成果を発展させて,地質学雑誌に投稿した.前年度に再掘削を行った高野層の上半部については指標テフラの分析を済ませて,2004年の掘削試料や野尻湖堆積物との対応関係を確認した.高野層の試料については粒度分析と珪藻分析などを行い,TOC以外の指標からの検証を進めた.下北沖で掘削された海洋底コアの解析を進めて,陸域と海域を比較する試料を得た.また,後期更新世における陸域と海域の古気候情報の統合を目指して,地質学界(札幌)でシンポジウムを開催した.その講演を地質学雑誌に特集号を編集した. 一方,中期更新世の古気候変動を解析するため,熊本市北部に分布する湖成層,芳野層について学術ボーリングを実施し,約30mの試料を得た.試料にはシルト層とともに予想以上のテフラ層が認められ,これらのテフラ層の解析は堆積物の年代の指標となるとともに,広域指標テフラが乏しい中期更新世のテフラ層の新たな標準層序を提示できる可能性もある.シルト層は藍鉄鉱を含む均質なもので,有機炭素含有量測定等からの古気候復元に有用なものと判断された.試料の最上部に阿多-鳥浜テフラまたはAso-1と推定されるテフラを認め,採取した試料は20数万年前から40万年前までの古気候解析に利用できることを確認した.10数万年前から20数万年前までの時代については長野県の川上湖成層を掘削候補として検討し,20年度に掘削する準備を進めた.
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