今年度は、歯科医師の手技を訓練するバーチャルリアリティステムを構築した。ここでは、まず、実際と同じように医師が歯の治療ができるヒューマンインタフェース機能を実現した。一般に、患者はベッドに寝かされており、医師はその上から患部を見下ろして手術する。しかし、これまでの人工現実感や複合現実感の研究では、医師が目の前のモニタに映し出された患部を手術することが多い。この問題を解決するため、我々は偏光ミラーを導入し、操作者の下に患部を映し出すようにした。次に、医師の頭や体の動きに連動して患部も動くよう、視覚や触覚の座標系をリアルタイムに変化させ、実際に手術を実施しているようなリアリティを獲得した。また、歯や(タービンの先についている)バーを(ボクセル群や点群のような)デジタル情報で表現し、それらの衝突チェックが高速にできるようにした。また、歯を構成する"エナメル質"、"象牙質"、"歯髄"、および"う蝕(虫歯)"の部分を独立に製作し、それらの硬さを自由に調整して削れるようにした。また、そのときの視覚と触覚のリアリティを維持するため、マーチングキューブ法を修正したアルゴリズムや歯科医師の感覚による調整をしたりした。これらより、実際に臨床の教授がさわっても十分リアリティのある歯切削が実現できるようになった。最後に、この研究では、CTスキャナ装置で計測された実際のデータで歯やバーのモデルを構築している。この意味でも、十分リアリティが高い人工現実感や複合現実感の手術システムが作成できたものと考えている。
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