わが国における原子力開発利用の歴史は、1957年8月、日本原子力研究所に初めて「原子力の火」がともって以来、およそ半世紀になる。しかし、この間、わが国における原子力規制はその規制構造を殆ど変えることなく今日にいたっている。このため、現在の原子力規制は合理性・実効性を欠き、信頼醸成を阻害する原子力システムをもたらしている。そこで、原子力規制に関する適切なガバナンスを実現するための俯瞰的研究を行う必要がある。 平成20年度は、原子力安全規制に関する統括的検討および知的インフラ整備の一貫として、2回の「原子力法工学ワークショップ」と4回の「原子力の安全管理と社会環境ワークショップ」、3回の「原子力に関する倫理研究会」を開催した。これらの場によって、原子力安全規制に係わるステークホルダーによって構成される社会システムのあり方を議論・検討し、適切なガバナンスを実現するための知見を蓄積した。なお、これらのワークショップや研究会の報告書は全てウェブ上で確認できる。 また、平成20年度は主に、申告制度と現場情報の活用、機微技術・情報の管理、国と自治体の安全規制に関する役割分担についての研究に取り組んだ。それぞれの研究課題について、制度の運用実態をヒアリングにより明らかにして、原子力事業者における社内通報制度の運用に対する提言や、安全情報と機微情報の区分とそれぞれに適切な扱い方の提案、原子力安全協定を通して国と県、立地自治体との安全規制に対する役割分担の提案等を行った。
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