研究課題
私たちはこれまでCre-LoxPシステムを用いたPTEN(phosphatase and tensin homolog)遺伝子の肝細胞特異的欠失マウスを作成し、この遺伝子改変動物モデルではヒトの非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に極似した脂肪性肝炎を自然発症するのみならず、炎症・線維化の進展に伴い高率に肝発癌が認められることを見出し報告してきた(Horie et al.J.Clin.Invest.2004)。本研究では、この脂肪性肝炎からの発癌機構における酸化ストレスの関与に焦点を絞り、検討を進めている。今年度はその一環として、このPTENノックアウト(KO)マウスに対する抗酸化剤N-acetylcysteine(NAC)の脂肪性肝炎抑制効果について検証した。PTEN KOマウスに40週齢までNAC含有水(1mg/ml)を自由飲水させると、コントロール群と比較し肝脂肪化は改善しないが、肝の炎症および線維化進展が軽度になり、肝組織中の活性酸素種(ROS)発現量も低下した。また、NAC投与群では肝組織中のglutathione peroxidase発現亢進およびglutathione reductaseの発現減弱が認められた。一方、PTEN KOマウスから単離した肝細胞におけるtent-butyl hydroperoxide(TBuOOH)負荷による細胞傷害はNAC添加により抑制され、そのメカニズムとしてROS発現の低下およびmitochondrial permeability transition(MPT)発生抑制が関与していることが明らかになった。以上の検討から、NACなどの抗酸化剤が脂肪性肝炎の発症・進展を抑制することにより肝発癌機構も抑制することが期待された。
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