研究分担者 |
池邉 一典 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (70273696)
山下 秀一郎 松本歯科大学, 大学院・歯学独立研究科, 教授 (80242212)
加藤 一誠 松本歯科大学, 大学院・歯学独立研究科, 教授 (00185836)
加藤 隆史 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (50367520)
増田 裕次 松本歯科大学, 大学院・歯学独立研究科, 教授 (20190366)
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研究概要 |
無歯顎患者において2種類の咬合高径の義歯を1ヶ月間使用させて,グミゼリーの咀嚼能率や嚥下闘値,噛みしめの測定を行い,さらに義歯や口腔感覚の主観的評価を行った.義歯作成時の咬合高径の决定には,咬合高径の快適域を求めて決定する方法と,旧義歯の咬合高径を再現する方法を利用した.平成20年3月の時点で,研究協力に同意した患者6名のうち2種の義歯の使用期間を完了した患者が2名であった.両患者とも旧義歯に比べて咬合高径が高い新義歯よりも旧義歯と同じ高径の新義歯で咀嚼機能が向上する傾向にあった.また,両2種類の義歯に対する主観的な評価に関しては大きな差がなかった.つまり,咬合高径が変化すると,快適と感じる咬合高径と咀嚼機能に適した咬合高径との間に違いがあることを示している.したがって義歯の咬合高径の変化に対して咀嚼機能が訓応し、義歯に対する主観的評価とある程度の一致するためには,一定の期間が必要である可能性が示唆された.さらに,有歯顎健常者に対して実験的に可逆的な垂直的な顎間距離に変化を付与すると,下唇の口唇閉鎖力など口腔機能が変化することを確認した.一方、モルモットの前歯部に咬合挙上板を装着し臼歯部の咬合挙上を行った後の咬合高径と咀嚼機能の変化を経日的に解析すると,咬合高径は急減期と漸減期があり,急減期には咀嚼時の閉口筋と開口筋活動が増大し開口量は減少したことから,咬合高径に応じて咀嚼機能が変化する可能性が示唆された.また,実験動物の開口を一定の範囲で制限すると,咬合高径が低下する傾向が認められた.さらに咀嚼運動や単純な顎運動の発現に関わる大脳皮質部位の間に神経連絡があり,口腔感覚を中継する視床との線維連絡に部位特異性があったことから,咬合高径の変化がもたらす口腔感覚情報が,高次中枢での認知やさらに咀嚼運動の調節に影響を与える可能性が示唆された.
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