研究課題
最終年度は性質検査について飛躍的な進展が得られた。ウェブグラフ等、入力のサイズそのものが膨大なものの場合、その全てでは無く、一部のデータを見るだけで、その性質を判定できれば、非常に便利である。性質P (Pはなんでも良い)と正定数εに対し、与えられたグラフGがPを満たすならば確率2/3以上で受理し、Pより遠い(ε遠隔)ならば確率2/3以上で拒否するアルゴリズムを性質Pの検査アルゴリズムと言い、多くの重要な性質に対し、グラフのサイズに無関係な定数時間で動作する検査アルゴリズムが知られ始めている。グラフの連結性判定に関しては、これまで無向グラフのk-枝連結性の定数時間検査アルゴリズムが知られているのみであった。これに対し、我々は、まず「有向」グラフのk-枝連結性の判定問題に対して定数時間検査アルゴリズムを構築した。無向グラフのk-枝連結性の検査の場合には、「与えられたグラフがk-枝連結から十分遠ければ連結成分が多数(線形個)存在する」ということは比較的容易に導け、これを元に検査アルゴリズムを構築できる。しかし有向グラフの場合は、この部分は非自明である。我々はさらに、無向グラフのk-「点」連結性の判定問題についても定数時間検査アルゴリズムを得た。点連結を扱うことは枝連結よりも一般に困難であり、本問題についても事情は同じであった。本アルゴリズムの構築のためには、点連結度を下げずに次数を減少させる技法が必要であり、そのために連結度増大問題の基本技法である枝分割(edge splitting)の技法を用いることで、これを解決した。後者のアルゴリズムは計算機科学分野における欧州の最高の会議であるICALP2008に受理され、発表した。孤立部分グラフ列挙については、それをまとめた論文がアルゴリズムの分野の最高の論文誌であるACM Transactions on Algorithmsに採録が決定した。
すべて 2009 2008
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Journal of Graph Algorithms and Applications 13
ページ: 55-73
ACM Transactions on Algorithms
Proceedings of the 31th International Colloquium on Automata, Language and Programming (ICALP 5125
ページ: 539-550