研究概要 |
都市景観時系列データの評価実験で加法形モデルの適用が疑わしくなる(i.e.,相互作用の考慮が必要になる)現象が確認された.加法形モデルの適用条件の精緻化を図るとともに過去と現在の景観刺激の相互作用を考慮できる解析手法の構築を検討した. 1.加法形モデルの適用条件:加法形モデルの適用条件を“制限付き"加法的可解性の概念を用いて定式化した.以下,動画像刺激を各時間ピリオドの構成要素の列で表す. c, w, fは寒色壁面,暖色壁面,植栽有を意味する.c[○!+]fは寒色系壁面に適当な植栽が付加されることを意味する.これまでは,植栽の付加が選好を幾らでも高められると仮定して条件を定式化したが現実的ではない.そこで,例えば,(c, c, w)の選好が“一定範囲"にあるときに(c, c, c[○!+]f)〜(c, c, w)なる無差別関係を実現できるか否かを第3ピリオドでの加法形モデル適用の判別条件とできることを示した. 2.相互作用を考慮できる解析手法:加法形モデルと相互作用モデル(一般化重み付き加法形モデル)に対してカルマンフィルタを用いてピリオド評価値を予測し,2つのモデルの推定精度を比較することにより,相互作用を考慮する必要性があるか否かを検討した.その結果,暖色壁面刺激(被験者18名),寒色壁面刺激(8名)ともに加法形モデルの推定精度が高く「相互作用が必要ではない」ことが示唆された,しかし,被験者数が少ないことおよび寒色壁面で相互作用モデルの推定精度が加法形モデルと同程度であることを考慮に入れるとこの結論は一般的ではなく,相互作用モデルのカルマンフィルタでの状態空間表現を工夫するなどより詳細な検討が必要であることが明確になった.
|