研究概要 |
学齢期脳性麻痺児に見られる側弯変形に対して、環境がどの程度影響するのかを見極めること目的に,今年度は在宅で暮らす重度脳性麻痺児(CP児)を対象に体幹運動機能と日常生活姿勢の調査を行い,以下の結論を得た. 1.在宅で暮らすCP児11名を対象に姿勢を24時間計測した結果,1日のうちで坐位を取った時間の合計は平均5.7時間であった.在宅CP児で坐位が多く見られた時間帯は,通園施設や養護学校に在籍している時間帯と一致しており,通園施設や学校での活動が,坐位など抗重力姿勢を促していることが確認された. 2.車いす坐位中に体幹を自ら動かせる6名(安定群)は,ほとんど動かせない5名(不安定群)よりも1日の坐位時間が長く(安定群平均7.5時間,不安定群平均3.6時間),1日に姿勢を変える回数が多く(安定群平均360回,不安定群平均165回),睡眠時に姿勢を変える時間の問隔が短かった(安定群平均2.7時間,不安定群平均7.2時問)。この結果よりCP児においては,体幹運動機能が抗重力姿勢の維持や姿勢変化の頻度を左右することが示唆された. 3.不安定群の中に,睡眠中に姿勢の変化が全く見られず仰向けのままであった児が3名いた.いずれも日中は平均して30分に1回の割合で姿勢が変わっていたことから,自ら姿勢を変えることができず介助者への依存が大きいCP児では,介助者の関与が薄くなる時間帯で姿勢変化が極端に見られなくなることが明らかとなった. また,開発した牽引式坐位保持装置の適合試験も行った.側弯を有するCP児に適合させたところ,即時的こ脊柱が伸張され側方への彎曲が減少することが確認された.
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