本年度は、研究の基礎となる春秋戦国秦漢時代の都市関係資料の収集と整理を集中的に行った。まず、これまで未収集の都市関係考古資料(考古学関係雑誌、報告書、貨幣など出土文字資料)を他大学の図書館や博物館において調査し収集した。これと平行して、これまで作成してきた手書きの都市遺跡カードを、本研究の目的に対応するように城趾内状況と城趾外状況に分けて再編成し、地図や写真、図面なども比較検討できるようにデータベースソフト・ファイルメーカーによってデータベース化を進めた。この作業を能率的に進めるため入力には研究補助者の協力を得た。これまでの作業によって、都市城外の考古調査は墓葬以外にあまり進んでいないことが明らかになってきたが、周辺の墓葬の副葬品からも都市の居住者や都市経済の問題を解明するための糸口が見えてきた。 また、中国現地における都市遺跡調査と最新の調査情報の収集も行った。陝西師範大学の侯甬堅教授らの協力により、漢長安城、秦都咸陽、秦都櫟陽の遺跡についでとくに遺跡周辺について重点的に現状を調査した。現地の研究者や農民にもインタビューしたが、城内よりも城外周辺の状況把握はかなり困難であった。今後インタビューに工夫が必要と感じた。ただし、現地調査を行うことにより、考古学報告書によっては得られない、周辺の地理的状況も的確に得ることができ、研究の精度を高めることができることが確認できた。 この他、『戦国策』、『史記』など文献史料を通読して関係資料をカード化し、都市周辺の情況把握に努めた。このような多角的な具体的アプローチにより、古代都市の立体的把握のための展望が開けてきた。
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