本年度も、研究の基礎となる春秋戦国秦漢時代の都市関係資料の収集と整理を集中的に行い、データベースソフト・ファイルメーカーによってデータベース化を進めた。この作業を能率的に進めるため入力には研究補助者の協力を得た。 以上の資料収集の結果に基づいて、暫定的に都市遺跡分布図を改めて作成したが、周辺地域にあたる北京西北部でも都市発達が見られることが明らかになった。その要因を探るため、中国社会科学院歴史研究所王震中教授の協力のもとに、北京西北の〓鹿県、蔚県の都市遺跡の現地調査を行った。その結果、この地域の都市発達は趙国の北方進出と関係があり、北方民族との交易活動を考慮する必要が出てきた。すなわち戦国時代を中心とする都市発達は、中原地域内だけでなく、中原地域と周辺民族との交易活動にも注目し重層的に考えていく必要がある。 またデータの蓄積によって、城郭都市と城外周辺とについても一定の知見を得ることができた。都市の城外には様々な遺構が確認できるが、そこから都市の多様性が浮かび上がってきた。政治的、宗教的都市や手工業製作場を有する経済的都市の他に、防御を強化した軍事的都市、運河や鉱山と関係のある特別な都市も確認できた。また、墓地や遺跡(農村集落)などの分布状況から、都市発達の背景も明らかになってきた。すなわち、中原地域では新石器時代以来の長期の居住地域における自生的な発展が見られるが、周辺地域では政治、軍事、経済的な進出にともなう都市建設が認められるのである。今後、都市あり方の多様性に注意しながら、都市発達を総合的に考えていく必要がある。
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