研究概要 |
今年度は奄美群島の沖永良部島と五島列島を中心に研究課題に沿った地域調査を実施した。 沖永良部島では須山を中心に平井も加わって農業活動と地域の高齢化の関係を明らかにする調査を行った。沖永良部島では球根・切り花・サトウキビ・ジャガイモ・肉牛繁殖などさまざまな農業が展開し,自立的な農業が確立されている。本研究ではさまざまな農業種目が観察される和泊町根折を主な観察点とする。沖永良部島では1980年代後半に従来のユリ球根栽培からユリ・キクを中心とする切り花栽培への転換がなされた。経営種目の転換は主たる農業経営者の世代交代をともなったが,切り花栽培への専作化を指向する後継者世代に対して,第一線を退いた高齢者世代はサトウキビ栽培を基礎とする複合経営の維持を強く奨励した。サトウキビ価格は国からの補助金によって安定しており,一方で切り花は市況によっては高い収益をもたらしてくれる。後継者世代は収益性の追求を第1の目標とした経営を指向するが,高齢者世代は特定種目へ依存するリスクを体感し,後継者世代に示唆を与える立場にある。沖永良部島の農業の背後には,世代間の価値観の相違に基づく葛藤があるものと予想される。 五島列島の調査は松井が中心的に従事している。松井は当該地域におけるキリシタン信仰の観光化を調査し,キリスト教会をはじめとする宗教景観が観光資源化されたプロセスを明らかにしようとしている。その中で信仰組織内部における高齢者の役割を解明することとなる。
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