研究概要 |
今年度は奄美群島の奄美大島と五島列島を中心に研究課題に沿った地域調査を実施した。 奄美大島では須山を中心に鄭も加わって農業活動と地域の高齢化の関係を明らかにする調査を行った。奄美大島北部の奄美市笠利地区は隆起サンゴ礁で構成される平野が広がり,サトウキビ栽培が近世以来継続されてきた。高齢化の進展にともない,刈り取りをはじめとするサトウキビ栽培の作業が農民にとって大きな負担となっている。 五島列島の調査は松井が中心的に従事している。松井は当該地域におけるキリシタン信仰の観光化を調査し,キリスト教会をはじめとする宗教景観が観光資源化されたプロセスを明らかにしようとしている。その中で信仰組織内部における高齢者の役割を解明することとなる。五島列島は高齢化の進展が日本の離島のなかでもとくに顕著な地域ではあるが,高齢者が有する若い頃からの信仰体験は,それ自体が観光資源となりうる。すなわち,「語り」としてカトリック信仰を提示することが,観光のまなざしのなかではきわめて新鮮に映ることを,松井は解き明かそうとしている。 その他平井は国勢調査のミクロスケールのデータに基づき,高齢者の人ロ移動の実態把握に着手している。また,平岡は古地図や文書史料から,近代化期の島嗅地域におけるエクメーネの拡大を明らかにしようとしている。 これらの成果の一部は,平岡編「離島研究III」に収められ,同時に2007年10月の日本地理学会秋季学術大会シンポジウムで研究代表者および分担者が発表している。
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