研究概要 |
今年度は研究代表者が奄美大島における農業と高齢者に関する調査を重点的におこない,連携研究者らが島嶼地域と高齢化に関する調査・研究をそれぞれ実施した。 研究代表者は,奄美大島北部におけるサトウキビ農業と高齢化の関係に注目し,経営規模拡大が,高齢化にともなう零細農家の離農と農地流動化によって進展したことを明らかにした。サトウキビ農業地域では高齢化の進展によりかえって経営規模が拡大し,効率的な農業経営が実現しつつある。また,奄美大島で近年栽培が拡大しつつある島バナナ栽培の主な担い手が,奄美を離れて本土で就職した,退職Uターン者であることを把握した。退職Uターン者は農地を相続・保有し,退職金を原資とした生活資金もあるため,農業経営そのものに生活を大きく依存しない。したがって彼らは作況の変動が大きい島バナナ栽培の担い手としてふさわしい。彼らはシマを活性化させる新たな高齢者像を提示しつつある。 連携研究者らはそれぞれの研究に従事しつつ,島嶼・高齢化をキーワードとした調査・研究を進めることで本研究と連携した。平岡昭利は近代化期における島嶼地域の開発が,新たな資源(アホウドリ羽毛)の獲得を目指したものであることを明らかにした。松井圭介は宗教地理学の視点から五島列島の高齢キリシタン信徒を分析し,同時に壱岐における肉用牛飼育に関する成果を発表した。高齢者の人口特性を専門とする平井誠は,日本の高齢人口移動に関するマクロスケールの分析を行った。また,鄭美愛は奄美群島における高齢Uターン者の居住に関する調査を実施した。
|