日本の検討に入っていく前に、社会事業の専門職(ソーシャルワーク)の創設に女性が貢献したと定評のあるアメリカの状況を検証することが必要だと考え、この点を18年度の研究の中心においた。具体的には、ソーシャルワーク誕生の過程が、女性の社会進出という文脈のなかでどのように評価されているのか、アメリカ女性史の通史的文献、個別研究のレビューにより検証した。そして女性の社会進出の場が限られていた状況が"female professional"としてのsocial workerの誕生を生みだしたとの側面を明らかにした。その研究成果を11月の第3回ジェンダー史学会にて「女性の社会進出と社会事業-新婦人協会とアメリカ社会事業の展開を通して-」というテーマで報告した。現在、その内容をもとに論文を執筆中である。 また夏休み期間を利用して、同志社大学アメリカ研究所所蔵"The Jane Addams Papers"(マイクロフィルム版)におさめられたアダムズ書簡のなかから、今後の分析資料として、当時の日本人との交流に関するものを収集した。さらに最新の研究動向、情報等を入手するため、ハル・ハウスとつながりのある女性史研究者との間で、メール交換を行った。そのやりとりとジェンダー史学会での報告の副産物として、2009年発行のハル・ハウス120周年記念特集号("Journal of Women's History"に、2000語程度のarticleではあるが、日本の女性運動とアダムズの影響について新婦人協会を中心に論じたものを投稿するチャンスを得た。掲載の是非は未定だが、もし掲載されれば、最終年度に目標にあげた、国際的なレベルで研究成果を発表し、世界の女性史研究にも貢献したいとの夢の実現に一歩近づけることになる。したがって今後、その執筆にも全力を注いでいきたいと考えている。
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