日本の状況を相対化するために、アメリカの社会福祉の専門職創設と女性の社会進出の相互関係について福祉史、女性史、個別研究から確認した前年度の研究をうけて、19年度は個別研究の成果をさらに追加、分析につとめた。その成果を5月の社会事業史学会で報告、論文にまとめ(1月脱稿)、現在、発表雑誌を検討中である。 また5月から10月にかけて、2009年発行のハル・ハウス120周年記念特集号("Journal of Women's History"に掲載予定の原稿、"The Women's Movement and the Settlement Movement in Early 20th century Japan"を執筆した(掲載内定)。この作業によって日本の女性運動が、J.アダムズの事業より影響を受けたものであったことをセツルメント運動吏のなかに位置づけ、社会事業の展開と女性の社会進出の相互関係という研究テーマの一端を明らかにすることができた。同時にアメリカの雑誌に掲載されるということで、本研究計画の最終年度にあげた、国際的なレベルで研究成果を発表し、世界の女性史研究にも貢献したいとの目標の一部を達成することができると期待している。 さらに10月から3月にかけては、日本の具体的な検討に入る20年度の研究にむけ、方面委員制度に関する先行研究の収集と史料入手につとめた。加えて本研究を補強するものとして、二つの成果を雑誌に発表した。一つは、女性福祉界の重鎮五味百合子氏へのインタビューを編集、まとめた報告である。五味氏は戦前、婦選獲得同盟が産婆役をつとめた母性保護連盟の職員として女性運動と社会福祉の接点である活動に従事されていたことがあり、今井がこの部分を担当した(先輩からの助言(第五回)五味百合子先生」(『社会事業史研究』第34号:今井担当「2.母性保護連盟職員の時代」)。また過去の女性の社会進出を検討する際には、現在の到達点も明らかにしておく必要があると考え、論文として発表した(男女共同参画社会の実現にむけて-女性福祉が問われる視点-」『大阪体育大学健康福祉学部紀要』第4号)。
|