方面委員制度が制度化されていく過程で、婦人参政権運動の中心となった婦選獲得同盟は積極的に女性の登用を訴えている。その方面委員制度のモデルの一つとなったのはエルバーフェルト制度だが、当時ドイツではその限界が指摘され、改善されたストラスブルク制度に国民の関心は移っていた。同制度はエルバーフェルト制度の名誉職に有給の公務員を併用するというシステムをとり、多くの女性に社会進出の道を開くことになったことから、日本でも1920年代後半から30年代にかけて注目が集まった。もしストラスブルク制度が本格的に導入されていれば、日本でも欧米のように女性たちが社会事業の表舞台に立ちその発展に貢献した存在として名を残したのではないか?そうであるなら、なぜストラスブルク制度ではなくエルバーフェルト制度を当時の日本がとりいれたのか、その背景を検討することは、社会事業の展開と女性の社会進出の相互関係を追究していく上で重要な課題だと考えた。そこで今年度は研究実施計画に基づいて、9月12日〜23日にかけてドイツ(旧エルバーフェルト市)、フランス(ストラスブール市)に資料収集、調査に赴き多くの収穫を得、その成果を3月に発表した。またこの調査が縁で、市民ボランティア団体主催(代表ドイツ在住椎川リエ氏)による展示会に方面委員に関する研究、現在の民生委員の状況を出展する機会を得て、1月から3月まで準備に時間を費やした。同展示会はエルバーフェルト制度発祥の地(現ヴッパータール市)の市長舎において2009年5月18日〜24日に開催される予定であるが、目的がボランティアの活性化であることから本研究を通じて国際交流・貢献ができたことに満足している。また前年度までの研究も1月に論文として発表した。
|