研究概要 |
まず,領域がn次元ユークリッド空間全体のとき, Ornstein-Uhlenbeck作用素を含むHamilton-Jacobi方程式の解の時間無限大での漸近解への収束の様子を明らかにした. 続いて,このHamilton-Jacobi方程式からOrnstein-Uhlenbeck作用素の粘性項が消去された場合に,漸近解への収束の様子を明らかにした. 前者は確率制御理論への応用を持っている. 後者は, Aubry-Mather理論に基づく解の表現を新たに与えることを可能にした. 次に,領域がn次元ユークリッド空間全体のとき, Hamilton-Jacobi方程式の解の時間無限大での漸近解への収束率を遅くする要因がAubry集合の幾何学的な性質と初期値の下限との関係であることを明らかにした. これは,従来の研究が漸近解への収束のみを考えるものであった点から,収束率を遅くする要因を明らかにしたと言う点で一歩踏み込んだ研究と考えられる. その他として, 上記研究に関連して2つの研究成果が得られた. ひとつは, 相加相乗の不等式, ヘルダーの不等式,ヒルベルトの不等式の証明をAubry-Mather理論により導くというものである. もうひとつは, Ornstein-Uhlenbeck作用素がポアンカレの不等式においてどのような役割を果たしているかについて明らかにしたものである.
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