研究概要 |
本研究の主たる目的は全占有率1の二層量子ホール系について電子が層内と層間で2種類の双極子を作るという観点から層間距離による基底状態の変化の様子を理解し,層間トンネリング,クーロンドラッグ,ホール効果等の実験結果を理解することである.この目的に向けて18年度はまづ,層間距離が無限大の場合の系である,占有率1/2の系において,層内で電子とホールの作る双極子がどの様に振る舞うかをReadとRezayiによる試行波動関数(Phys.Rev.Lett.71(1994)900)に基づいて検討を重ね,その特徴を明らかにしてきた.電子とホールの束縛状態の角運動量依存性,相互作用依存性を詳しく知るために,関連する問題として,強磁場中での不純物と電子の束縛状態の詳細な研究を行い,この結果をSTSを用いた実験と直接比較ができる不純物回りの局所状態密度の振る舞いとして論文にまとめた.この計算結果は実験と半定量的に一致している,これにより,一層系での双極子状態の理解を深めることができた.この解析結果に基づき,本来の目的である2層系についての研究に進み研究を続行中である.この研究ではShibata and Yoshioka(J.Phys.Soc.Japan75(2006)043712)によるDMRGでの計算結果を参考にし,2種類の双極子の組み替えを記述する理論の構築を目指している.現時点では先行研究であるKim et al.(Phys.Rev.63(2001)205315)の理論とは別の視点での基底状態の構築が必要であることが明らかになりつつある.
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