研究概要 |
松枯れ被害は北海道,青森県を除く日本全国で発生している。平成17年度の被害量は69万m^3とピーク時の約3割程度になっているものの,東北地方では平成17年度においては全国被害量の約1/4を占めるなど,未だ高水準で推移しており,今後の被害拡大を防ぐための有効な手段が求められている。本研究は,高解像度衛星に利用が可能になったことから,リモートセンシング技術の導入により,松枯れ被害木と健全木のスペクトル値を解析することで,単木レベルでの松枯れ被害木の抽出を目標としたものである。2006年5月30日及び9月19日に予備調査を行い,宮城県黒川郡大和町に調査地を設定した。解析に用いた高解像度衛星画像は,IKONOS画像(2001年5月,2002年7.月)とQuickBird画像(2006年9月3日)の2種類である。解析には,ERDASIMAGINE8.7,ArcGIS9を主に使用した。現地調査は2006年10月中下旬に4日間,GCP測量(17地点)と3プロットでの毎木調査(104本)によるグランドツルース(樹木位置座標3樹種,胸高直径,樹高,樹冠形状,健全度診断)を行った。位置座標はDGPS測量(Trimble Ag124)により取得した。座標系は日本測地系を採用した。幾何補正は,DEMを用いた単画像オルソ幾何補正により行い,RMS誤差は1ピクセル以下とした。IKONOS, QuickBird両画像の1ピクセルの大きさを025×0.25mとして3次畳み込み内挿法により変換した。スペクトル解析による経年変化から被害個体を抽出した。NDVIによるカラー合成変化領域の抽出,画像間演算を行った。松枯れ被害林では,健全林に対してNDVI値が増加した。この結果は松枯れの被害率に起因し,松枯れ被害の増大により下層植生がNDVIに影響したと考えられた。
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