研究概要 |
松枯れ被害木を高解像度衛星(IKONOS,QuickBird)を用いて単木レベルで抽出することを研究目標としている。前年度の研究では,GPSによりGCPを得ると共に,グランドツルースにより樹木位置の特定や健全度の目視診断などを行い,単画像オルソ幾何補正により,RMS誤差1ピクセル以下の画像を得た。本年度はこの画像を元に樹勢の違いによる被害個体の抽出を,被害状態によって分類された各バンドのスペクトルのDN値とNDVI値から試みた。松くい虫被害木を判別するには,DN値よりもNDVI値の方が有効であることが,分散分析および多重比較の検定結果から解明された。樹木の活性が低下すると可視光域よりも近赤外域の反射率の低下が顕著に見られるとされているので,樹勢判別には可視光域よりも近赤外域の方が有効と予測されたが,検定の結果何れの画像においても,近赤外域に有意差は認められなかった。健全木と被害木,被害木と枯死木はNDVI値を用いることによって区別された。NDVI値による健全木と被害木の判別的中率は76.5%だった。同様に被害木と枯死木は68.1%,健全木と枯死木は51.6%だった。DN値とNDVI値を組み合わせた最大的中率は健全木と被害木が76.5%,被害木と枯死木が74.5%,健全木と枯死木が65.6%だった。以上の結果から,松枯れ被害木の抽出にNDVI値は有用であり,DN値を組み合わせることによって,より被害木の判別精度が向上することが期待された。
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