研究概要 |
[目的]ヒトの自己免疫性唾液腺炎・涙腺炎であるシェーグレン症候群(SS)におけるB細胞増殖の遺伝様式と感受性遺伝子座を明らかにすることを目的に、SS自然発症モデルIQIマウスにおけるB細胞優勢の下顎腺炎(B細胞性唾液腺炎)の遺伝学的解析を行った。 [材料と方法]6ヵ月齢(IQIxC57BL/6)F2雌マウスにおいて、B細胞性下顎腺炎の組織学的定量結果を量的形質として判定し、ゲノムDNAを用いて多型性マイクロサテライトマーカーによる遺伝子型タイピングを行い、両データを遺伝統計学的に解析した。 [結果]区間マッピングにおいて、LODスコアが有効水準significant levelを越える量的形質遺伝子座(QTL)が第6染色体前端に検出され、autoimmune sialitis in IQI mice, associated locus 1(Asq1)と命名した。単独では有意な効果を示さないものの、Asq1と共存することによってAsq1の効果を増強するエピスタシス遺伝子座Asq2が第3染色体後部に、また、Asq1の効果を抑制する遺伝子座Asq3が第1染色体後方に検出された。 [考察]SSモデルIQIマウスにおいて、B細胞性下顎腺炎は主要遺伝子を中心に少なくとも三つの遺伝子の相互作用によって制御されていることが判明した。主要な感受性遺伝子座Asq1の候補遺伝子として、ヒトおよびマウスモデルSSの自己抗原であるislet cell autoantigen1 (Ical)が、抵抗性遺伝子座Asq3の候補として細胞増殖を抑制する転写因子p202をコードする遺伝子interferon inducible gene 202(Ifi202)が挙げられた。本研究結果は、ヒトSSにおけるB細胞増殖の複雑な遺伝様式を解明する上で有用な基礎知見と考えられる。
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