平成18年度の研究において、シェーグレン症候群(SS)モデルIQIマウスのB細胞性下顎腺炎の主要感受性遺伝子座として第6染色体上にAsq1を、Asq1の効果を増強するエピスタシス遺伝子座Asq2を第3染色体上に、また、Asq1の効果を抑制する遺伝子座Asq3を第1染色体上に検出した。平成19年度は、これら3つの遺伝子座から候補遺伝子を選出することを研究目的とした。 Asq1については、既存の遺伝子データベースを精読して遺伝子座内から候補遺伝子として可能性が高いと考えられたIca1に注目し、mRNA発現量、cDNA塩基配列、おおびIca1タンパク質への免疫応答をIQI-B6マウス間で比較研究した。Asq3については、IQIおよびB6マウスの下顎腺mRNA量をマイクロアレイ法で比較研究し、候補遺伝子を選出した。Asq2については、既存のデータベースから候補遺伝子座を選出した。 下顎腺におけるIca1 mRNA発現量にIQI-B6マウス間で有意差は認められなかったものの、Ica1 cDNAをシークエンスした結果、IQI-C57BL/6間で6個の1塩基多型と2個のアミノ酸多型が検出された。また、IQIマウスの血清中に抗Ica1自己抗体が検出された。下顎腺発現遺伝子のマイクロアレイ解析の結果、IQIがB6に対し高発現し、かつ当該遺伝子座内に位置する遺伝子として、細胞増殖を抑制する転写因子の遺伝子であるIfi202が検出された。Asq2については、B細胞リンパ腫好発マウスであるSL/khマウスのB細胞増殖関連遺伝子座Bomb1との関連性が疑われた。 本研究によって、SSモデルIQIマウスにおける感受性遺伝子のうち2個の遺伝子が候補として選出された。両遺伝子はSSのみならずI型糖尿病、SLEにおいても注目されている遺伝子であり、自己免疫疾患の病理発生にとって重要な基礎知見となる。
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