研究概要 |
金沢大学角間キャンパス「里山ゾーン」内の25年にわたり放棄されていた棚田跡において,すでに2002年から2007年まで,復元を段階的に実施しながら,動植物の種類相,種ごとの個体数,開花植物と訪花昆虫の関係等を,春から秋まで総合的にモニタリングしてきた。本研究課題では2007年度内にさらに棚田の復元と保全作業をを進めながら生物多様性の変化を記録した。また,キャンパス周辺,珠洲市,能美市等の棚田,水田でも比較調査をおこなった。主成果は以下である。 1.上述の里山ゾーンにおいて脊椎動物の多様性と群集構造の変化を,特に地表歩行性甲虫類(コウチュウ目:ゴミムシ科)に注目して調査した。棚田復元地のほかに,コナラ林,モウソウチク林,スギ林,等を調査地としてえらび,落とし穴トラップを用いて,月1回採集を繰り返した。ゴミムシ類を対象とした解析の結果,(1)生息環境による種類構成の差が明瞭に検出された。(2)再生作業により種類構成,個体数にはっきりした差が生じた。(3)小型で飛翔力のある種は,再生作業のある湿地で多くなり,大型で飛翔しない種は,再生作業のない湿地に見られた。(4)棚田の再生活動は,ゴミムシ類の種類構成に大きな変化をもたらした。 2.上述の棚田復元地の水田内において,昆虫類,クモ類を中心として,2004年は17目4993個体,2005年は13目2508個体,2006年は12目2171個体が採集され,捕食者ギルドの個体数・割合は3年間で有意に増加した。クモ類は合計75種が確認され優占目であり,2004年は10科38種875個体,2005年は10科42種1078個体,2006年は11科38種700個体が採集された。クモ類の種組成は2004〜2006年まで年ごとに異なっており(DCA解析),水田の広分布種が移入しつつあった。
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