研究概要 |
メタロチオネイン遺伝子欠損マウス(MT(-/-)マウス)や野生型マウス(MT(+/+))を用いて、胎生期における低濃度の水銀蒸気(0.03mg/m^3 Hg^0)、メチル水銀(5ppm MeHg)、そしてHg^0とMeHgの複合曝露(Hg^0+MeHg曝露)が、神経行動機能に及ぼす影響について検討した。Hg^0曝露を受けた場合、MT(+/+)マウスでは、神経行動に対する影響は少ないが、MT(-/-)では行動影響が認められ、無機水銀に対し、MT(-/-)マウスは高感受性であることが明らかとなった。しかしながら、胎生期に5ppm MeHgの曝露を受けた場合、MT(+/+)マウスではOPF試験やモリス水迷路試験で行動影響が見られ、特に雄マウスでMeHgに対する感受性が高いことが判明した。Hg^0+MeHg曝露により神経行動影響が見られたマウスの脳のDNAマイクロアレイによる変動遺伝子を解析した結果、複合水銀曝露により雌雄のMT(+/+)マウス、MT(-/-)マウスともに遺伝子発現の増加は検出されなかった。しかしながら、両系統とも性差にかかわらず多くの遺伝子で発現の減少が認められた。次にHg^0曝露による神経行動毒性の解明を行うため、雌雄のC57BLマウスを用い、曝露濃度0.27〜0.52mg/m^3、連続7日曝露を行い、その後脳組織をDNAマイクロアレイとプロテオミクスにより解析し、DNAおよびタンパク質の変動について検討した。DNAマイクロアレイの解析では、Hg^0曝露により発現量が2倍以上増加した遺伝子数は雄性マウスでは35,852遺伝子中13個であり、逆に2倍以下に発現量が減少した遺伝子数は35,852遺伝子中24個であった。雌性マウスでは2倍以上増加した遺伝子数は35,852遺伝子中2個であり、逆に2倍以下に発現量が減少した遺伝子数は35,852遺伝子中20個であった。一方、プロテオミクスの解析では、3つのスポットの発現が確認された。しかしながら、低分子タンパク質の発現量の変化や高分子タンパク質でも発現が減少したタンパク質について今回の実験では検出できなかった。現在、発現したタンパク質の解析を行うとともにDNAマイクロアレイにより得られた遺伝子の変動の関係を行っている。
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