研究分担者 |
森 則夫 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00174376)
武井 教使 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任教授 (80206937)
中村 和彦 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (80263911)
辻井 正次 中京大学, 現代社会学部, 教授 (20257546)
岩田 泰秀 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10285025)
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研究概要 |
背景 自閉性障害(小児自閉症)の発症には遺伝要因が強く関与している。しかし,孤発例は全体の3分の2を占めるといわれ,少数の感受性遺伝子のみで発症が規定されるものではないことが確実視される。本研究においては,遺伝負因の有無に注目し,これが診断および脳MRI所見とどのように関連するかについて検討した。 方法 14例の自閉症スペクトラム障害(自閉性障害,アスペルガー障害,特定不能の広汎性発達障害:以下ASDと略)および11例の定型発達の男性被検者について,一定の条件下でMRIを施行し,画像解析ソフトSPM2を用いて,全脳容積,灰白質容積,白質容積,左、右海馬容積,小脳容積を計測した。また,被験者の両親に簡易面接を行い,父親におけるlesser variant(ASDの診断基準を満たさないが,自閉症スペクトラムに合致するASDのtrait marker;Piven et al.1994)を評価した。診断には,自閉症診断面接改訂版(ADI-R)を用いた。自閉性障害群および定型発達群間での容積の比較においては,ANOVAを用いて年齢および全脳容積の補正を行い,各群における補正された平均値を比較した。 結果 14例のASD群のうち,5例の父親にlesser variantを認めた。定型発達群の被験者の父親には,lesser variantをもつ父親はみいだされなかった。次いで,各部位の脳容積について,ASD群および定型発達群それぞれの補正された平均値を比較したところ,統計学的に有意な差は見いだされなかった。しかし,lesser variantの有無を考慮に入れたところ,左海馬の容積が定型発達群で2.57mlであったのに対し,lesser variantの父親を持たないASD群が2.36ml,lesser variantの父親を持つASD群が2.77mlであった。ASD群内におけるlesser variantの有無の影響はp=0.02で統計学的に有意であった。 結論ASD群においては、遺伝負因の有無によって,脳MRIにて測定された左海馬容積に差が見られた。ASDを発症するpopulationの中に,遺伝負因の有無によって異なる中間表現型をもつサブグループの存在が示された。
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