研究課題
国内の研究対象地域を、黒部峡谷(富山県)と新潟県糸魚川市の鉱山(明星セメント(株))の2箇所に定めた。前者には、地震計と超長波マイクロフォンを設置し、雪崩発生によって引き起こされる地震動と空振のモニタリング観測を冬期間にわたって行った。一方、後者には地震計とデータロガーを設置し、発破による地震動を記録すると共に、モニターカメラによる雪崩発生の記録との比較・検討を行った。さらに現地での気象観測データと積雪変質モデル(SNOWPACK)を用いて、積雪の雪質、密度、含水率、せん断強度等を計算し、雪崩発生危険度の空間・時間変化を算出した。今冬は暖冬小雪で経過したため、発破に伴う雪崩発生は観測されなかったが、同様の計測と解析は次年度も継続して実施される予定である。3月には西村、和泉、阿部の3名がKirovsk(ロシア)のApatit雪崩研究所にChernouss博士を訪問し、当地で実施されているアパタイト(リン鉱石)鉱山での大規模な発破(地震)による雪崩発生の観測に参画した.実験は1回のみで、今回は発破に伴う雪崩発生はなかったが、本結果をもとに次年度の観測態勢(測定機器の種類、設置場所、時期、観測地点)等の詳細な検討が行われた。また当地でこれまでに蓄積されたデータを入手し、発破のエネルギー、振動特性、雪崩発生規模などの関係について解析を行った。また、国内では積雪のせん断破壊強度の測定に向けて、クランプ、モーター、加速度計等を組み合わせた小型振動台(0.2m x 0.1m)の試作を行った。次年度には、本システムとロシアで開発された試験機を併用し、低温実験室内で高歪速度領域の積雪破壊特性を測定する予定である。